日々読書メモ

大学で受けた授業をきっかけに太宰治を好きになりました。最近はもっぱら太宰です。自分が読んだ本の紹介(ネタバレ有)、感想、考察等書いてます。もちろん太宰以外でも書きますよ(^^)京都が好きなのでそれについても書いてます。

「富嶽百景」を読んでみた

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富嶽百景読みました。短くてテンポよく読めたので良かったです。

 

題名のとおり富士山のことについて太宰が色々綴ってるものなんですがディスったり褒めたりしてめっちゃ上から目線で、「お前は一体どこの立場の人間なんや」って突っ込みたくなりました(笑)。

 

ニツポンのフジヤマを、あらかじめ憧れてゐるからこそ、ワンダフルなのであつて、さうでなくて、そのやうな俗な宣伝を、一さい知らず、素朴な、純粋の、うつろな心に、果して、どれだけ訴へ得るか、そのことになると、多少、心細い山である。

 

って言ってるし。

 

つまり「最初は富士山って皆が憧れ持ってるから良いように見えるだけで全然そんな存在知らんとパって見たら絶対そんな大したことないで」ってことなんですけど。

 

何様や(笑)

 

しかもこのすぐあとに

 

 十国峠から見た富士だけは、高かつた。あれは、よかつた。

 

どっちやねん(笑)普通に笑いました。

 

あと気づいたのが

 

 東京の、アパートの窓から見る富士は、くるしい。

 

ってあるんですけど、昔は東京から富士山見えてたんですね。

 

そりゃそうか。

 

今はビルとかがいっぱい建ってみえんくなっちゃったもんなぁ。

 

逆にもし今このビル群を太宰が見たらどう感じてどう表現するんでしょうか。

 

そういえば井伏鱒二太宰がお世話になった先生でその井伏が泊まってる茶屋の部屋に泊まりに行った時、

 

井伏鱒二氏が初夏のころから、ここの二階に、こもつて仕事をして居られる。私は、それを知つてここへ来た。

 

ってあるんですね。

 

井伏鱒二は何を書いてたんでしょうか?

 

話は戻って、その茶屋にいた時のエピソードとしてめっちゃ笑ったんが二人で出かける時太宰がダサイの極みたいな格好なってて

 

井伏氏は、人のなりふりを決して軽蔑しない人であるが、このときだけは流石に少し、気の毒さうな顔をして、男は、しかし、身なりなんか気にしないはうがいい、と小声で呟いて私をいたはつてくれたのを、私は忘れない。

 

って感じ。

 

完全に井伏が「お、おお…」ってこまってるやつやーんって突っ込みたくなりました(笑)。

 

格好つけておもろいことなってるとこといえば、

 

維新の志士。鞍馬天狗。私は、自分を、それだと思つた。ちよつと気取つて、ふところ手して歩いた。ずゐぶん自分が、いい男のやうに思はれた。ずゐぶん歩いた。財布を落した。

 

も笑いました。落とすんかい(笑)っていう。

 

しかも

 

富士。月夜。維新の志士。財布を落した。興あるロマンスだと思つた。

 

って訳分からんこと言うてるし、トドメは

 

 富士に、化かされたのである。私は、あの夜、阿呆であつた。完全に、無意志であつた。

 

って自分で突っ込んでテンション下がってる…。

 

もうギャグやん。

 

太宰は自意識過剰なとこ本当に多いというか、考えてることが中学生みたいっていうか、それがまたわかるシーンが

 

私にはその様が、からだがしびれるほど快く感ぜられ、私もまた、富士なんか、あんな俗な山、見度くもないといふ、高尚な虚無の心を、その老婆に見せてやりたく思つて、(中略)頼まれもせぬのに、共鳴の素振りを見せてあげたく、老婆に甘えかかるやうに、そつとすり寄つて、老婆とおなじ姿勢で、ぼんやり崖の方を、眺めてやつた。

 

ってとこなんですけど簡単に説明すると、茶屋へ帰るバスに乗ってたら皆富士山見てテンション上がってたけど隣に座ってたお婆さんは富士山の方を見ず反対の車窓を眺めていてそれがなんかめっちゃかっこいいってなって僕も皆と違ってあんな山に騒いだりせーへんで、あなたの気持ちわかるでって勝手に思い込んでかっこつけて一緒に車窓を見つめるっていう(笑)

 

中学生か。

 

私も中学生の時は皆が良いって言ってる歌手より敢えてマイナーな歌手好きって言って他とは違うんやアピールしたりとかね。

 

恥ずかしい。

 

でもこういうの誰でもあると思うんですよね。

 

だから太宰って本当に人間らしいし私たちに近いんやなって思います。

 

そして最後は富士山を見に来たカップルに富士山バックに写真撮ってくださいって言われて、

 

 どうにも狙ひがつけにくく、私は、ふたりの姿をレンズから追放して、ただ富士山だけを、レンズ一ぱいにキャッチして、富士山、さやうなら、お世話になりました。パチリ。

 

って感じで締めます。

 

「あらあら、可愛い。やっぱり富士山好きなのね。」って言いたくなりました。

 

何作品か読んできて、太宰は物語の締め方が上手いな〜って思いました。なんていうか、すっきりするわけじゃないけど春の風みたいにふわっとしてて、「まぁいっか。」って思わしてくれる。ちょっとモヤッとするけど不快ではない。みたいな。

 

とにかく、「富嶽百景」面白かったです!